王国民のいう神セトリとは何なのか?
はじめに
来年のツアー発表が自分が思ってる以上に嬉しかったようで、最近ゆかりさんの昔のライブのセトリを見返したりしています。
次のツアーは公演数が多いので、もしかしたら自作のセトリを作って知り合いと車で移動する人もいるかもしれません。
少なくとも共通の話題がゆかりさんしかない場合、他の若い女の曲を車内で流すよりは盛り上がるはずです。
そこで今回はせっかく自作セトリを作るなら手の込んだものを作ってみようと考えて試行錯誤した結果をシェアします。
どんなセトリを目指すのか?
私はバンド活動をしたこともなければDJをしたこともないので正直どうやってセットリストを作ればいいのかさっぱり分かりません。
そこで、取り敢えずセトリの中に刺さる曲が入っていればいいという雑な仮定で話を進めます。
ゆかりさんのライブ中にイントロが流れると突然、頭を抱えて泣いているおっさんをたまに見ませんか?天を仰ぐタイプも居ます。
ここでは刺さる曲とはそういう身体反応が出る曲としましょう。
車の運転中にそんな反応されると危険なので、必ずセトリを組んだ側が運転しましょう。
この刺さる曲をセトリに幾つか混ぜ込むと、きっと古参ヅラしたおっさんでも神セトリだと錯覚して道中の話も弾むでしょう。(多分)
そこで、以下では刺さる曲を過去のセトリデータから定量的に選ぶことを目指します。
セトリデータを集める
今回扱うサンプルはイベントを除いたライブのみにします。
セトリに幅を持たせるために正式名称にライブが入ってないもの(黄色)、神楽坂さんのもの(青色)、FCイベントだけどガッツリライブだったものも混ぜています。
公演数は729、曲のタイトル数は312、歌った曲数は3799。
このサンプルの中で歌われた回数が多い順に並べると以下の表の通り。
予想通りというか「fancy baby doll」がトップです。(122回)
選曲してみる
ライブで歌われた回数の高い曲をリリース年に従って埋めていくと下記のような感じです。
各年で人気のありそうな曲を2つ程度挙げてみました。(リリースアルバムは時代を思い出す参考用に併記)
この表から選曲すれば有名(?)曲で固めたセトリが完成するはずです。
しかし沢山歌われた曲がすなわち刺さる曲であるのかどうかいまいち根拠に欠ける為、以下では実際のライブの傾向をもう少し詳しく見てみようと思います。
ツアー公演数とセトリ曲数
ゆかりさんの各ライブにおけるセトリの曲数を先ずはグラフにしてみました。
一回の公演で歌われた曲数は赤、アンコールを除いた曲数は緑、アンコール・ダブアンの曲数は青。
セトリ曲数の平均は25曲ですが、初めてこの水準に達したのは2008年の武道館公演「Chelsea Girl」です。
最多は36曲の「ゆかりっくFes」。
次に同一タイトルのライブの回数、つまりツアーの公演数をグラフにします。
公式タイトルがツアーだったりLoveLiveだったりするので、ここでは単純に4回以上開催されたものを
線で繋いでみました。(赤い点は3回以下のライブ≒非ツアー)
初めてツアー公演数が2桁になったのは2010年の「STARRY☆CANDY☆STRIPE」で最多は2021年の「Airy-Fairy Twintail」。
グラフからセトリの曲数は25前後で安定しているのに対してツアー数は増加傾向にあるのが見て取れます。(近年特に…)
従ってライブで歌われた回数のみで選曲すると公演数の多いツアー固定曲が主に挙がります。
それを刺さる曲として選んでいたのが最初に検討したセトリの実態であったと言えます。
当たり前と言えば当たり前の話。
曲の指標を作ってみる
ライブで歌われた回数以外に”何かのスコア”を用意して、それに従って選ぶことで変化に飛んだ神セトリを組むために以下では5の指標を無理やり捻りだしてみました。
1.定番性、2.レアリティ、3.セトリ位置、4.アコステ率、5.アンコール率
以下ではそれぞれの意味とスコアを実際に出していきたいとます。
1定番性
「ゆかりさんと言えばこの曲」的なものをチョイスする為の指標を考えてみます。
1曲だけだと「fancy baby doll」で決まりかと思いますが、ここでは敢えて時代を3つに区切って考えてみたいと思います。
狙いとしては時期を区切ることで過去に沢山歌われていたけど今はレアな曲になっているような曲を評価するためです。(あわよくばゆかりさんのパブリックイメージの変遷も織り込めるといいな…)
表4の最初の区切り、つまり第一期を「2002~2008前半」とします。
PCゲー厶がルーツのアニメが多かったり、そもそも一般的に声優のライブ規模が大きくなかった時代で名前を「PCゲーム期」としておきます。
PCゲーム期の終わりとしては「Chelsea Girl」辺りで、初武道館だったり「月の雫ぷろじぇく」とをもう一回やろうとしていた人が居たり。
2007年で区切っても良かった気がしますがクラナドのアニメが2008年だったのでそこで一区切りにしました。
この区切りは2008年でPCゲームが終わったという意味ではなくてゆかりさんの出演作品傾向が変わったという意味です。
この時代、公演数は22回、歌った曲数は457回。
定番性上位曲は下記の表で示します。(全データCSVファイル:gitリンク)
表の左から3番目の列「定番率」ですが、これが定番性の数値としているもので、
歌われた回数 ÷(ある時期に)歌った総曲数
でスコア化しました。
1位の「Little Wish」で説明すると2002~2008前半にゆかりさんがライブで457回歌ったうちの4.6%が「Little Wish」ということです。
つまりこの時期は単純に22回に1回(1/22=0.45)歌われている計算になります。
この時代の1公演あたりのセトリ数平均はグラフ1より20.8なので、ざっくり1公演に1回「Little Wish」が歌われていると考えられます。
PCゲーム期は良く歌われる曲の上位20曲の定番率を足すと50%、44曲で足し算をすると約80%になります。
従って44曲知ってたらどのライブに参加しても8割は知っている曲で構成されているという意味です。
この定番率を高い順に棒グラフにすると以下の通りです。
次の区切り、つまり第二期を「2008後半~2016」とします。所謂アニメのイベント全盛期かなと思います。
円盤にイベント参加券がついてたり、アニメのイベントにシークレット参加で出演したりとイベントの頻度と規模が上昇していた時期。
ラノベ原作のアニメが増えて世間的にもややオタクが世間的にメジャーになってきた感じのする時代。
キング時代と言った方がピンとくるかと思いますが、正確にはちょっと違うので「声優イベント期」と命名します。
公演数は84回、歌った曲数は2030回。そんな時代の定番性上位曲は下記の表。(全データCSVファイル:gitリンク)
「fancy baby doll」が約3.7%でこの時代の定番率1位ですが、一つ前の時代の「Little Wish」は4.7%でした。
定番率が低くなっているのはPCゲーム期より声優イベント期の方が単純に期間が長いのに加えて、ゆかりさんの持ち曲数が増えた為だと思われます。
ちなみに1位のfbdと2位の「You & Me」との差は1%近いのに対してPCゲーム期の1位と2位の差は約0.4%と僅差。
声優イベント期は定番率の高い上位45曲でライブ曲総数の50%をカバーしています。
最後の区切り、第三期を「2017~2022」とします。名前はソシャゲ期としました。
ここ最近の状況を考えると世間がどうのと言うよりは、ゆかりさんが自分でレーベル作ってから今までと言った方がしっくりくるかと思いますが、他の期間と整合性を取るために「ソシャゲ期」にします。
公演数は54回、歌った曲数は1312回。そんな時代の定番性上位曲は下記のリスト。(全データCSVファイル:gitリンク)
声優イベント期は定番率の高い上位22曲で曲総数の50%をカバーしています。
期間の長さはPCゲーム期に似ているので50%カバー数も傾向が似ていますが80%カバー数を比べると、PCゲーム期44曲に対してソシャゲ期は58曲となり選曲の幅広さが違うことが分かります。
2レアリティ
あんまり歌われていない曲を評価する指標です。所謂”通”好みの曲を探すスコア。
一度も歌われたことのない古い歌を混ぜても良いのですが、今回はあくまで”定量的”に評価するのが目的なのでレアとは言えある程度歌われている曲に絞ります。
具体的には2回以上の異なるライブタイトルのセトリに選ばれた曲のみを対象とします。
スコアの計算方法ですが、一度セトリに採用された後に再度別ライブで採用されるまでの期間の日数をレアリティとします。
ツアーやライブで歌われた最後の日から次に歌われた日で計算しました。
複数ある場合は単純に期間の長い方(レアリティの大きい方)を選択します。
この方法で計算するとゆかりさんの歌った曲のレアリティ平均値は1445(日)となります。
4年(365*4)待てばもう一回選曲されるかもね~と言った感じでしょうか。
下記にレアリティが高い順に表を作りました。(全データCSVファイル:gitリンク)
全曲のレアリティをグラフにすると下図。
「Airy-Fairy Twintail」で歌われた「夢見月のアリス」が如何にぶっ飛んだレアリティだったのかおわかりいただけただろうか…
補題:地縛霊型ファンの閾値
歌われなくなって長いこと経ってしまった曲を思って今なお待ち続けているタイプのファンを地縛霊型と仮称します。
今回の方法で計算したレアリティの平均は1445、つまり約4年程度です。
計算の対象となった曲の総数205曲に対して126曲つまり61%の曲は4年以内に再度セトリ入りしているので、地縛霊型のファンを取り合えず4年以上待ち続けている人と定義するとどうなるか?考えてみます。
来年2023/2/27のイベントの日に仮にゆかりさんが全曲歌ったと仮定して計算すると下図の通りです。
7割ぐらいの曲はもう思い出の中の曲として成仏させましょう。。。
最後に参考までに上のグラフで「夢見月のアリス」のレアリティ越えをする曲を表にしました。(全データCSVファイル:gitリンク)
3セトリ位置
ゆかりさん(他の人も?)のライブでは曲のタイプによって曲順が大きく左右されます。
よってセトリの位置で区切ってしまえば曲調や雰囲気別に何となく曲が絞れるような気がします。
あるいは自作セトリを作る際の曲順の指標に使うのにも有効だと思います。
ライブによりセトリ数が違うのでここでの数値は
セトリ中の曲の順番 ÷ アンコールを抜いたセトリ曲総数
で出して歌われたライブの数だけ平均値を取っています。(ダブアンもデータから除外)
スコア順に並べると下のような感じになります。(全データCSVファイル:gitリンク)
セトリ位置で特徴を見る為に強引に5分割してそれぞれのフェーズに含まれる曲を数えてみました。
仮にアンコール無しのセトリが21曲であった場合、グラフ8の縦軸のひとメモリは21×0.2=4.2曲、つまり約4曲でライブの1フェーズを区切っています。
このように強引に線引きするとライブのど真ん中辺りで歌われる曲数が多い(≒バリエーションが豊富)ということで、当たり前ですがこれが各ライブの印象やテーマを決めていると考えられます。
一方で最初の方に歌われる曲(導入フェーズ)と最後の方に歌われる曲(エンディングフェーズ)の数を比較すると導入フェーズの曲数が極端に少ないです。
これは、あるライブの導入フェーズで歌われた後に別のライブの他のフェーズで歌われる事が多い為に平均値が高くなり前半フェーズに落ちることが多い為だと思われます。(雑に言うなら最初に歌う専用の曲は無いという意味です。)
加えてエンディングフェーズの曲数がある程度の数になっているのは例えば「Gratitude」や「Double Fascination」のような最後(専用?)の歌がある為です。
因みに各曲の分散、つまりセトリ位置がどれだけ移動するか?の値を出すと大抵の曲が0.001以下。すなわち基本的には殆どセトリ位置が動かないことが分かりました。
以下ではセトリ位置に関して面白かったものを幾つかピックアップしてみます。
・定番性の高い曲のセトリ位置変遷
歌われた回数の多い曲をピックアップすると下図のような表が出来ます。(セトリ位置順に並べ替えてあります。)
表10ではそれぞれの歌の定番率が一番高かった時期を参考までに一番右の列に併記しています。
初期(PCゲーム期)には前半・後半に定番率の高い曲が配置されていたのが、声優イベント期になると主にセトリ中盤~後半に固められるようになったと読み取れる並びになっています。
(単にセトリ曲数が増えた影響もありますが。)
最近では「聴こえないように」が定番性の高い曲の中で唯一、セトリの頭に位置するような新しい使い方をされているように思えます。
個人的に「Honey Moon」の位置が高すぎるような気がしますが、これは多分「Fall in Love」の影響です。分散値も高いので。
FiLツアーのNHKホールでのあの一発目のイントロが分からなくて意表を突かれた、ああいう新鮮さを今度は「聴こえないように」でやられると多分刺さって死ぬ。
・セトリ位置の変動が大きい曲
分散の大きい曲を並べてみました。
基本的に導入フェーズとエンディングフェーズはアップテンポよりの元気な曲が選ばれる事が多いので、そういう曲はセトリ位置が大きく動きやすい特徴を持っていると思います。
個人的に面白いなと思ったのは「Heavenly Stars」でSCSツアー派(ド頭)とILR派(後半)でセトリ位置の印象が真っ二つになるような気がします。
「Super Special Smiling Shy girl」も何だかセトリ位置が高すぎる気がするのですが、それは次の項目で考えたいと思います。
・アンコール曲
今回の計算ではアンコール抜きでの位置を計算しているので、アンコールでよく歌われていた「Super Special Smiling Shy girl」のセトリ位置の値が0.37になりました。(つまり7,8曲目)
これはちょっと思い出と言うか印象とは違う結果になっています。
同じセトリ後半に置かれる印象のある「Gratitude」は0.95なので、値だけで比べるとSSSSgは前半歌われる可能性があるのに対してGratitudeを前半聞く可能性はほぼ無いことが分かります。
最近だとその位置に当たるのは「Exactly」ですが、この曲は上の2つの曲と違ってアンコールで歌われる可能性が少ないです。
数字だけで考えると「ケセラセラ」の方がアンコールで歌われる数が多いので、これから先はSSSSgやグラチュのポジションを取っていくようなきがします。
4アコステ率
アコステに使われた曲の指標です。
計算は簡単に各曲毎に下記の通りにしています。
アコステとして歌われた回数 ÷ 歌われた回数トータル
単にアコステ率の高い順に並べると「Soundrops」ツアーの影響が高くなるので歌われた回数が10回以上に絞ってリスト化してみました。(全データCSVファイル:gitリンク)
セトリ位置の指標でみると、アコースティックは前半or中盤に来ることが多いのが分かります。
それにしても「fancy baby doll」は何にでも食い込んでくる…
5アンコール率
アンコールに使われた曲の指標です。考え方はアコステ率と同じです。
計算は各曲毎に下記の通りにしています。
アンコール(ダブアン)として歌われた回数 ÷ 歌われた回数トータル
アンコール率の高い順に並べたものは下図の通り。(全データCSVファイル:gitリンク)
表14では最初に指標として作った定番性の高い時期を併記してあります。
イベント期ではライブ中盤に選ばれる曲であっても別のライブではアンコール曲として選ばれることが多い事が分かります。
例を挙げると「My wish My love」や「あのね Love me Do」など。
一方で最近(ソシャゲ期)では最初からアンコール曲として選曲されているような曲がちらほら出てきているような気がします。
「それは奇跡なんかじゃない」「La La Love call」「ジェラシーのその後で」など。
その他、アンコール率は高くないもののアンコールで歌われた回数の多い曲を並べてみたものを下図に示します。
ざっと見ると前の表13で見て取れたように、ソシャゲ期のアンコール曲はそれ専用になっている傾向があるのに対してイベント期ではアンコール曲のバリエーションが豊富だったことが分かります。
個人的に意外だったのは「童話迷宮」が思ったよりもアンコール曲で採用されている点でしたが、これは「STARRY☆CANDY☆STRIPE」でアンコール曲として使用していた為でした。
まとめ:神セトリとは?
今回のセトリ分析では5つの指標を出してゆかりさんの曲のスコアを出してみました。
有名な曲、たまに歌われる曲、曲順、アコステ、アンコールで歌われる曲などそれぞれの目的別にスコアの高い歌を選んでいくと自分の意図したセトリがある程度組み上がるようになったと思います。
次回は、この5つ指標を実際のゆかりさんのセトリに当て嵌めて各ライブのセトリがどんな感じで構成されているのかを再考したいと思います。(気が向けば。タブン。)
参考
田村ゆかりライブ/イベント採用曲まとめ:http://yukarinlive.com/index.shtml
アニソンデータベース:http://anison.info/data/
ゆかりんデータベース:http://yukarin-db.sakura.ne.jp/
声優全曲リスト「例の企画」:http://www.kumagaya.or.jp/~kameda/nanashi/TeamVIP/Data/VIP034.html
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